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第1部 三章【護りのミサト!】その3 第伍話 ゲスト活動大成功

Author: 彼方
last update Last Updated: 2025-11-21 18:30:00

57.

第伍話 ゲスト活動大成功

「な、なんで5索に受けないんですか……?」

 ミサトはあまりの驚きに思わず賤機に質問した。

「はい、カンした時点ではトップを狙って新ドラ乗せることを考えてましたけど、235という形が残ったこと。新ドラが乗らなかったこと。12000もトップ以外からアガるかツモでラス回避になることを加味して死角で待てるならそれが一番である。そして読める打ち手が安心する待ちとは何か。それは345索で鳴いて2索単騎。これだけだと……。井川プロ。あなたの実力を知っているから信じて2索単騎待ちを選べたんです」

 ミサトはそれを聞いてドキッとした。聞けば聞くほどに合理性のある答え。そして、ミサト自身も好みなラス回避の選択。さらにそれは相手を知ることでしか辿り着かない正解。研究熱心な人物にしか使えない一手。それは彼がミサトをよくよく研究していることの証拠でもあったから。

「……副店長さん。あなた私の友人に似てるわ。麻雀教室を経営してる子なんだけど。人の心理のその深い底から全てを見るような子でね。こっちは切る牌を誘導されてしまうの。タイトル戦で優勝とかもしててすごいのよ」

「へえ、そんな人がいるんですか。その方も競技プロ選手なんですか?」

「いえ、アマチュアよ。麻雀教室を敷居の高いものではなくお互い同じアマチュアですよ。という目線でやる事で経営に成功してる子なの。面白い戦略でしょう。彼女は本当に人の心が読めるのよ。その賢さから『女賢王』なんて言う人もいるわ。本人はやめてよと言ってるけどね。……副店長さん。失礼ですけど、その、お名前なんて読むんですか?」

「『しずはた』です。しずはたひかり」

「そう『ひかり』ね『ひかる』じゃなくて。強いわね、ヒカリさん。ちょっとドキっとしたわヨ♡ ふふっ!」

 次の日以降もアクア静岡は満卓が続き『牌戦士 三郷幸』として引き受けた初めてのゲスト活動は大成功となる。

 そして――

「ありがとうございました井川さん飯田さん。お2人のおかげでみんな楽しめたと思います」

「いえいえ、では私たちはこれで失礼します。ユキ」

 そう言って2人はフロアを向いて整列する。

「「お先に失礼します。本日はありがとうございました。みなさんごゆっくりどうぞ!」」

 ミサトは賤機と連絡先を交換してアクア静岡をあとにした。

「良かったね、ミサト。イケメンな彼氏ができて」

「ヒカリさんのこと? 全然彼氏とかじゃないわよ。でも、まあ。男前だったわよね。だからって好きになったってわけじゃないけど」

「ふふふ、素直じゃないんだから。むこうはミサトにゾッコンって感じだったけどな」

「そう? 本当にそう思う?」

「間違いないと思うよ」

「ふふ、そっか♪」

 そんなお喋りをしながらミサトとユキまた移動する。

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